「折戸周治賞」選考結果 

           2015年2月17日

 

「折戸周治賞」選考委員会

選考委員長 山田 作衛

 

選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

 

受賞者:三田 一郎 (名古屋大学名誉教授)

 

受賞対象:「B中間子崩壊における大きなCP対称性の破れの理論研究」  

 

授賞理由: 

中性K中間子の崩壊におけるCP対称性の破れを説明するため、小林・益川模型は3世代のクォークを想定し、その後チャーム、ボトム、トップの3クォークが順次発見されて、3世代の存在が予言通り確認された。三田氏は、小林・益川模型に基づいて第3世代のボトムクォークを含むB中間子の崩壊におけるCP対称性の破れを詳細に検討し、そこではK中間子よりも大きなCPの破れが現れることを指摘し、検出のための具体的な崩壊過程を提示した。K中間子とは独立な方法で小林・益川理論をより詳細に検証できる可能性が示されたことは、世界で注目された。これに触発され、示唆された手法が技術的には難しいものであったにもかかわらず日本と米国で非対称エネルギーの電子・陽電子衝突加速器Bファクトリ―が建設されたり、高エネルギー陽子加速器でもB中間子崩壊の実験が立案されるなど、新たな実験研究が展開した。Bファクトリーでは、後年KEKBelleSLACBaBarの二つの大型国際共同実験が、ともに、中性B中間子の崩壊の精密測定で鮮やかにCP対称性の破れを検出した。これら実験結果は小林・益川模型の検証となり、小林・益川両氏のノーベル賞受賞にも繋がった。第1回折戸賞は、そのBelle実験の成果に対して授与されている。

クォーク起源のCP対称性の破れは、宇宙の粒子・反粒子対称性の破れを理解する上でも重要な情報を与えると考えられており、精査する意義は大きい。現在も、KEKでは後継の加速器スーパーKEK-Bと測定器BelleIIが建設中であり、CERNLHCでもLHCb実験が進むなど、B中間子のCP対称性の破れの研究は世界で精力的に続いている。

B中間子崩壊のCP対称性の破れの研究は、長年続けられ今後の展開も期待される大きなテーマであり、その可能性を初めて解き明かした三田氏の功績は大きいものである。 

以上


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「戸塚洋二賞」選考結果 

           2015年2月17日

 

「戸塚洋二賞」選考委員会

選考委員長 荒船 次郎

 

選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

 

受賞者: 小林  隆(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授) 

     中家  剛(京都大学 大学院理学研究科 教授)

     塩澤 眞人(東京大学 宇宙線研究所 教授)

 

受賞対象:「加速器ミューニュートリノビームによる電子ニュートリノ出現現象の発見」

 

授賞理由:

東海村のJ-PARC大強度陽子加速器施設から295km離れた神岡のスーパーカミオカンデ(SK)にミューニュートリノを飛ばすT2K (Tokai to Kamioka) 実験は,ニュートリノ振動によって電子ニュートリノが出現することを発見した。小林氏、塩澤真人氏、中家氏は、それぞれ、T2K実験成功の正否を決定するもっとも重要かつ最先端技術を要する,ビーム生成施設、スーパーカミオカンデ(SK)、前置ニュートリノ検出器の責任者として、世界中から集う研究者と技術者をまとめ、設計と製作を主導し、スケジュール通りの実験開始を実現させた。小林氏が責任を担ったビーム生成施設は、数百キロワットという世界最大強度レベルの陽子ビームを受け入れ、高い放射線強度を許容し、高品質ニュートリノビームを生成するという、先例のない先端施設である。中家氏が責任を担った前置ニュートリノ検出器は、大型電磁石、大型TPC、新型半導体光子検出器を使用した総チャンネル数20万に及ぶ先端素粒子実験装置で、ニュートリノ実験において世界最高性能を誇る。塩澤氏が責任を担ったスーパーカミオカンデはT2K実験の主検出器であり、2001年の大事故からの完全復旧のための大改修、さらに性能向上のため最先端のエレクトロニクス技術や情報処理技術の粋を集めた信号処理システムを導入し、観測態勢を整えた。これらの先端装置の製作に加え、その後の長期にわたる運転とデータ収集において、小林氏は実験代表者、中家氏は物理解析総責任者、塩澤氏はT2K内スーパーカミオカンデグループのリーダーとして、T2K実験を強力に推進してきた。

 3世代のニュートリノの間には3種類のニュートリノ振動があり得て,そのうちの2つ,即ち,大気ニュートリノ振動、太陽ニュートリノ振動は既にSKで観測され,それぞれ,大きな混合角θ23θ12が発見されていた。しかし最後の混合角θ13による振動は他の混合角に比べ小さかったため、なかなか観測されなかった。T2K実験による発見は「混合角θ13が有限値を持つこと」の世界で初めての観測であり,とくに,世界で初めてのθ13に関する電子ニュートリノの「出現」の観測でもある。この実験で「ニュートリノが3世代間で混合していること」を明瞭に確定し,ニュートリノ振動の全体像をほぼ明らかにしたことは素粒子物理学及び宇宙物理学における重要な発見として高く評価できる。

 また,我々の住む物質宇宙の創成には「CP非対称性」が必要であり,CP非対称性の理解は物理学の重要な研究課題である。将来,加速器ニュートリノビームを使い、電子ニュートリノ出現と反電子ニュートリノ出現の相違を観測できれば,レプトンにおけるCP非対称性の存在を証明でき,あるいは宇宙創成の研究にも寄与できる可能性がある。今回の成果はそのための布石となるものであり,その意味でも高く評価できるものである。

                                                                                                                                                      以上

 

 

下記の要領で、表彰式を執り行います。

日   時

2015年3月21日(土)15:00−16:00

会   場

東京大学「小柴ホール」

113-0033 文京区本郷7−3−1

 

表彰式をご観覧ご希望の方は事前のお申込みが必要です。
こちらをご覧ください。