「折戸周治賞」選考結果 

           2014年2月12日

 

「折戸周治賞」選考委員会

選考委員長 山田 作衛

 

選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

 

受賞者:浅井 祥仁 (東京大学大学院理学系研究科 教授)

田中 純一 (東京大学素粒子物理国際研究センター 准教授)

 

受賞対象:「ヒッグス粒子発見における解析への貢献」  

 

授賞理由: 

LHCATLASCMS実験によるヒッグス粒子の発見は、素粒子の標準模型に残っていた最後の課題を解決した。この確認により、ヒッグス場による素粒子の質量生成を提唱した、アングレール、ヒッグス教授が2013年のノーベル物理学賞を受賞した。ヒッグス粒子は物質を構成するフェルミオンのクォークやレプトン、力の源となるベクトル(あるいはテンソル)ボソンの素粒子のいずれとも根本的に異なり、両者に質量を与えるスカラー粒子である。標準模型が様々な検証実験で確立した中で、基本をなすスカラー粒子だけが長年発見されず、数多くの加速器で探索が続けられた。LEP等での精密実験でその質量の下限や最適予想値は得られていたが、LHCの大型測定器ATLASCMSによる実験で、初めてその崩壊を通じて観測され、質量とスピン等が測定された。これにより標準模型が完結した意味は大きく、両実験の功績は素粒子物理研究の歴史に残るものである。

ATLASCMS実験はともに超大型の国際共同実験であるが、日本からは100名余の研究チームがATLAS実験に当初から参加して、測定器の設計、建設に寄与し、現在もデータ取得、データ解析に邁進している。その中で、浅井氏は物理解析で日本チームを統率し、ATLASグループの中でもヒッグス粒子解析、超対称性粒子の探索で指導的役割を果たした。ことにヒッグス粒子解析では、データが少ない段階でヒッグス粒子を同定する際に鍵となるような崩壊チャンネル(2光子、WW対、タウ粒子対)に的を絞って、若手研究者を交えた力を結集し、ATLASグループ全体をリードできる体制を整えた。軽いヒッグス粒子の場合のWWやタウ粒子対崩壊の重要性を指摘するなど、ATLASグループがこれらの崩壊過程を総合し、短期間にヒッグス粒子発見に成功する上で、浅井氏の貢献が大きかった。田中氏はその解析グループにおいて、2光子崩壊過程の解析を主導した。新粒子のスピン・パリティーを決めるに際し、2光子への崩壊の存在と角分布は極めて重要な観測であり、4レプトンへの崩壊などと併せて、新粒子をヒッグス粒子と同定する根拠となった。そのために、電磁シャワー検出器の較正を最適化するなど分解能の向上に努め、非常に多くのバックグランドのガンマ線のある中で、シグナルの検出を可能にした周到な解析は大きな貢献である。両氏とも、ATLASグループ全体の中でもヒッグス粒子解析に指導的な役割を果たしている。

大きな国際共同実験の中で、日本チームの功績はハードウェア建設や維持、較正を含む多岐に亘るものである。それを基盤にしてヒッグス粒子の発見があったことは言うまでもないが、多様な物理解析が可能な中で、今回は特にヒッグス粒子発見に焦点を絞り、その解析への貢献を授賞対象とした。


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「戸塚洋二賞」選考結果 

           2014年2月12日

 

「戸塚洋二賞」選考委員会

選考委員長 荒船 次郎

 

選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

 

受賞者:吉田  滋 (千葉大学大学院理学研究科 教授)

       石原 安野 (千葉大学大学院理学研究科 特任助教)

 

受賞対象:「超高エネルギー宇宙ニュートリノ発見への貢献」

 

授賞理由:

千葉大学の吉田滋氏と石原安野氏は、南極の氷河のなかに1立方キロメートルにもなる巨大な高エネルギー宇宙ニュートリノ探索実験IceCubeに参加し、そのなかでも、両氏は特に最高エネルギー宇宙線の謎の解明等を念頭に超高エネルギー宇宙ニュートリノの探索を進めてきました。特に吉田氏は日本に大きな組織的基盤の無いなか、科研費等によって、IceCubeで使う光電子増倍管のキャリブレーションを責任を持って行うなど、IceCubeの建設にも貢献してきました。

IceCube参加当初より吉田氏の主張は明確で、1020電子ボルトにも及ぶ最高エネルギー宇宙線起源の謎(加速天体の同定など)の解明には、超高エネルギーのニュートリノの観測が不可欠であるとの主張でした。そのため、吉田氏と石原氏はIceCubeのなかに数多くある解析グループのなかでも特に超高エネルギーニュートリノ探索を主導して解析してきました。その結果、昨年にPeV(1015eV)を超えるエネルギーをdepositしたシャワー事象2例を発見しました(エネルギーの誤差は約15%)。大気ニュートリノから予想されるバックグラウンドは0.082 +/-0.004(stat) +0.041-0.057(syst)で、偶然おこる確率は2.9×10-3(2.8シグマ)でした

 吉田氏と石原氏のグループが主導して進めた解析で発見された2例は、その後のIceCubeの解析を刺激し、この発見を機に少し低いエネルギーを含めたシャワー事象の解析が行われ、その結果30TeV以上に、この2事象と合わせて28事象が観測され、一方、大気ニュートリノや大気ミューオンののバックグラウンドは10.6+5.0-3.6事象となり、4シグマレベル(99.994%の確かさ)での有意性を導くことになりました。

これは長らく期待されていた超高エネルギー宇宙ニュートリノ観測の幕開けとなるもので、高エネルギーニュートリノ天文学にとって非常に重要な最初の成果です。これはIceCube collaborationグループの成果ですが、吉田滋氏及び石原安野氏の貢献はとりわけ大きいと判断され、戸塚洋二賞の授賞にふさわしいものであります。
                              
                                                                                                                                                                                                                    以上

 

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下記の要領で、表彰式を執り行います。

日   時 2014年3月15日(土)15:00−16:00
会   場 東京大学「小柴ホール」
〒113-0033 文京区本郷7−3−1


表彰式をご観覧ご希望の方は事前のお申込みが必要です。
こちらをご覧ください。