「折戸周治賞」選考結果                2013年2月12日

                                     「折戸周治賞」選考委員会
                                      選考委員長 山田 作衛

選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

者 : 小林 富雄 (東京大学・素粒子物理国際研究センター・教授)
近藤 敬比古 (高エネルギー加速器研究機構名誉教授・同特別教授)
山本  明 (高エネルギー加速器研究機構・教授、低温工学センター長)


受賞対象: LHCによるTeV領域物理実験の開拓」

授賞理由: 
 CERNの大型陽子・陽子衝突装置LHCは最高エネルギーでの陽子衝突により、TeV領域の素粒子物理研究に新しい可能性をもたらした。加速器は順調に性能を上げ、昨年は全エネルギー8TeVでの実験を行った。ATLASCMSの二つの国際チームが精力的な解析を行い、既にHiggs粒子と矛盾しない性質を持った新粒子の発見や超対称性粒子の探索等で、成果を上げている。我が国の研究者も多数ATLAS実験に参加して、その測定器の設計・建設に当初から寄与したほか、LHCの建設自体にも超伝導技術で寄与しており、こうした成果を上げる上で、多大の貢献をしている。
 とりわけ、小林、近藤、山本3氏の貢献は大きく、日本のチームを形成かつリードし、国際的な共同作業の中心となって実績を上げて来た。小林氏は、ATLASグループ形成当時から、我が国チームの中核として、LHC実験への参加を計画し、ATLASの中でも指導的な役割を果たしてきた。近藤氏は、SSCが中止になったことを契機に、同じ研究を目指すATLACに参加し、小林氏と協力して日本チームを率いる中核となった。両氏を中心として、我が国のATLASチームは、研究所と大学の連携を活かして、長年にわたり薄型ミューオン検出器、半導体飛跡検出器などの測定器の建設、その後のデータ解析基盤の構築も含めた実験準備に邁進した。実験開始後は現地と国内での精力的な活動を続け、今日の成果へと導いた。近藤氏の停年まで、両氏が日本ATLASグループの共同代表を務め、小林氏は今も共同代表の一人である。
 山本氏は、世界屈指の超伝導の専門家として、ATLAS測定器の超伝導ソレノイド建設に責任を持つ一方で、LHC加速器の超伝導磁石の建設も分担し、アメリカのBNLFNALの研究者とも協力して、多くの超伝導電磁石を完成させ、LHCATLASの成功に不可欠の貢献をした。
 このように、3氏は緊密な協力と連携のもとに、LHCATLAS実験の全体に対して、20年余の貢献をし、最高エネルギーの陽子衝突による物理実験に道を開いた。未知の領域を探求する実験研究の基盤を築いた功績は大きい。

以上


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「戸塚洋二賞」選考結果         2013年2月12日


                                    「戸塚洋二賞」選考委員会
                                     選考委員長 荒船 次郎


選考委員会で慎重な審議を行い、下記の通り決定いたしました。

受 賞 者 : 鈴木 厚人 (高エネルギー加速器研究機構長)
井上 邦雄 東北大学・理学系研究科・教授、同ニュートリノ科学研究センター長)

     
受賞対象: 液体シンチレータを用いたニュートリノ研究、特に地球反ニュ−トリノの観測

授賞理由: 

 鈴木厚人氏は1990年代に神岡に1000トンの液体シンチレータを用いた測定器(カムランド)を建設し、日本中の原子炉で生成される反電子ニュートリノを観測して、太陽ニュートリノ問題の解明とニュートリノ振動の研究を行うことを提案しました。それと共に鈴木氏は地球内部のウランやトリウムの崩壊起源の反電子ニュートリノを同じ測定器で観測できる可能性を示しました。井上雄氏はカムランド実験に1998年より参加し、当時の研究代表者である鈴木厚人氏のもとで反電子ニュートリノの研究を始めました。2006年に鈴木氏がKEK機構長として転出した後はカムランドの代表として更に研究を進めました。
 両氏の努力の結果、原子炉から放出される反電子ニュートリノのエネルギーに依存した欠損を明確に観測し、電子ニュートリノの振動の確定に非常に大きな貢献をし、ニュートリノ振動パラメータを精密決定しました。
 2005年に地球反電子ニュートリノ観測の兆候を報告後、測定器内のバックグラウンドを徹底的に理解し、2011年に地球内部のウランやトリウムの崩壊起源の反電子ニュートリノをカムランドで観測し、地表の熱流量44兆ワットに対し、地球内部での放射性熱生成が24±9 兆ワットであると初めて測定しました。これが44兆ワット以下であることから,熱の起源が放射能だけではなく地球創成時の原始の熱が残っていることを初めて示しました。この研究は、いわば「ニュートリノ地球物理学」の研究分野を創設したと言えます。これらの成果は、基礎科学にとって非常に重要な成果です。



以上


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下記の要領で、表彰式を執り行います。

日   時 2013年3月20日(水)15:00−16:00
会   場 東京大学「小柴ホール」
〒113-0033 文京区本郷7−3−1


表彰式をご観覧ご希望の方は事前のお申込みが必要です。
こちらをご覧ください。